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大阪の新サーキットイベント「ZERO NEN CIRCUIT」について主催者に話を聞いてみた!



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3月20日(木・祝)に心斎橋に新しいサーキットイベント「ZERO NEN CIRCUIT」が誕生する。
東京・下北沢MOSAiCと大阪・関大前TH-R HALLの東西のライブハウススタッフが主催となり、2024年5月から数回行った単独イベントを経て、今回初の4会場サーキットフェスとして開催される。

その経緯や狙い、今後の展望も踏まえ、主催者の1人である関大前TH-R HALLの平尾さんに話を伺った。

 

ZERO NEN CIRCUITの経緯と目的

遊津場(以下・津):それではまずZERO NENがどういうイベントか教えてください。

平尾(以下・平):ZERO NENは去年5月から始動したイベントで、下北沢MOSAiC店長の佐々木さんと立ち上げたイベントです。
コンセプトは「これからの世代を担っていくバンド達を1日で見れる」としていて、これまでは8〜9組のバンドを1日で見れる日を作りました。去年に続いて、今年も1月11日に大阪、25日に東京で開催して、3月20日に初めてサーキットイベントとして開催します。

:平尾さん自身は普段からライブハウスでブッカーとして働かれているんですよね?

:はい。大阪のライブハウス・関大前TH-R HALLでブッキングを主に担当しています。普段は『学生天国』という学生がチケット代無料のイベントを月4〜5本定期的に制作しています。

:そこから下北沢MOSAiCの佐々木さんとどういった経緯で今回サーキットフェスをやろうという流れになったんですか?

:最初サーキットイベントを作るのは、自分にはあまり縁のないことなのかなと思ってたんですけど、ZERO NENをやるにあたって「これからの時代を担うアーティストと今出会ってほしい」「8〜9組揃えて、お目当て以外の多くのアーティストに出会ってほしい」という思いで制作して、反響をいただく中で、やっぱりサーキットフェスは出会いの場になると感じて、新しい出会いのきっかけを大阪に作りたいなという思いが生まれました。
東京は若手のサーキットイベントがかなりの頻度で行われているというふうに感じるんですけど、大阪は数がまだ少ない分、見放題とMINAMI WHEELという2つのサーキットイベントの存在感が大きすぎて、大阪は年2回というイメージになっています。ライブハウス主催のサーキットもあるんですけど、ブッキングは箱の色が強いと思っていて。
そことは違った結構オールジャンルを網羅しながらも、これからのロックシーンを代表するバンドが多く出る新しいイベントがあったら面白いんじゃないかな?と思って始めました。

:オールジャンルのサーキットイベントを作る中で、参考にしたサーキットフェスはありますか?

:佐々木さんがいるということもあるので、佐々木さんが制作している下北沢の『KNOCKOUT FES』は参考にしていて、その関西版になればと考えています。KNOCKOUT FESのように登竜門的なものになればと思います。

でもやっぱり見放題はボランティアスタッフも経験していたり、バンドのスタッフで行ったこともありますし、昨年はコラボステージを担当させてもらったこともあるので、出会いも多くもらった憧れのイベントです。

:逆にそんな先人達のイベントを見て、ZERO NEN CIRCUITではこういうことしてみたいというのはありますか?

:いろいろ見たのも経て、今回のイベントは下北沢と大阪のライブシーンが融合ができたらなとは思っています。佐々木さんと僕というところで。その意識は強いです。
どうしてもサーキットイベントって、出演者次第でイベントの色だったり、お客さんの反応が変わってくるところもあるんですけど、ZERO NEN CIRCUITはイベントをしっかり育てて、このイベントだから知らないバンドが多くても行くみたいな人を増やしたいと思っています。そのためにSNSの発信を既存のサーキットよりは強化していきたいと考えています。

:東京のKNOCKOUT FESのように、見放題やミナホ以上に登竜門の色を出しつつ、SNSをしっかり活用して宣伝を頑張っていくと。

:あと若い人達にたくさん来てほしいなとは思っています。バンドもお客さんも。
若い子がライブハウスに来るきっかけのイベントを組み続けたいと思って、学生天国も作っているし、今回のイベントもその延長で1組でも多くのアーティストに出会ってほしいと思っています。
だから今回は高校生以下はチケット代1000円にしています。サーキットイベントで1000円はかなり挑戦的な値段だとは思うんですけど、1人でも多くの高校生や若い人に見てほしいという思いがあります。

:それはやっぱり平尾さん自身も10代くらいの時にライブハウスでライブを見て、感動した体験などをされたんですか?

:そうですね。自分も見放題に行ってreGretGirlとか見てた時期がありましたね笑

:「ライブハウスに行く」という体験はどこが魅力だと思いますか?

:音楽自体はいつでもどこでも聴けますけど、ライブでしか味わえない生の、例えばMC一言一言から生まれる空気感や音源では味わえない衝撃や感覚を与えてくれるのが、ライブハウスの魅力かなと思います。
衝撃や感覚を味わえるライブは、見ながらいろんなことが考えれて「もっと頑張ろう」と思ったりとか、生きる上での原動力をライブで常に僕ももらっています。
ずっと見てたバンドが大きなステージに立った時や良いライブをした時は、自分のことのように嬉しいですし、自分の人生と重ねてしまうこともあります。

:そんな経験を多くの若い人に伝えたい。

:ただ難しい話なんですけど、どれだけ口で伝えても来ないと分からないものがライブだと思うから。多くのバンドマンも「来たら分かる」と言うと思うんですけど、その来るきっかけを裏方の人間としては多く作りたいと思って、イベントを組んでいます。

:平尾さんは24歳で、すでに身近にSNSやサブスクもあって。それでもやっぱり来ないと分からない喜びや感動があるという言葉は、若いからこそ重みもあるのかなと思います。


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平尾さん(Xより)

 

ブッキングについて

:そういった思いを経て、どういうブッキングを心がけましたか?

:大阪の僕と東京の佐々木さんの共同イベントというところもあるので、どちらか中心ということではなく、それぞれ大阪と東京の一番熱い、時代を担っていくであろうバンド達を呼んでいる自信はあります。

:たしかに意外と大阪と東京ががっぷり四つでタッグ組んでます!というサーキットフェスは珍しいですよね。基本的にサーキットフェスのレペゼンは1ヶ所ですから。

:ちょうどブッキングの比率も半々くらいになっています。

:大阪と東京のブッカー2人がたしかにちゃんと立ってますよね。

:サーキットフェス常連組もいれば、初出演やまだサーキット経験の浅いバンドもいますし、これからの解禁でも常連も新星も増えていきますし、大阪のサーキット初出演のバンドもいたりするので、新時代を体感できると思います。1年後に「まさかこの人たちが出てたんだ!」となるようなイベントになっていると思います。

:ブッキングする時や普段のライブとかでも、バンドのどういうところを見てますか?

:ライブ面だったらそのバンドの唯一無二な個性が確立していて、やりたい音楽や見せたいものがしっかりしているバンドが個人的には好きです。今回のブッキングでも、やはり個性のあるバンドを呼んでいるかなと思いますね。
ただやっぱり普段の学生天国などで動員を頑張ってくれているバンドは呼びたい気持ちが芽生えます。今回のらくガキなんかもそうなんですが、頑張って動員した姿を見せたバンドは、ライブを見ても「このバンドは何かを生むんじゃないか」という気持ちにさせてくれるんですよね。

:普段からライブハウスにいる分、今回の出演者にもいろいろ物語を感じている部分もあると思います。

:もちろん全組にあるんですけど、普段の僕の活動を知っている人は分かると思いますが、夕方と猫とは特に嬉しい思いも悔しい思いも共にしました。サーキットを経て成長したバンドと思っているから、そのバンドを自分のサーキットイベントの初回に呼べるのは嬉しいなと思っています。ただ僕だけでなく佐々木さんからしても必要不可欠な存在だと思いますね。
夕方と猫に限らず、このバンド達となら絶対面白いことができると思って信頼しているバンドしかいないので、初回で不安もあるんですけど、一緒に挑戦したいなと思って取り組んでいます。

同世代との交流から

:少し話は変わりますが、本当に平尾さんの元には、多くの同世代の音楽関係者が関西・関東問わず集まっているのをよく見ます。そこでの交流で先輩のブッカーなどとは違った知見を得たり、刺激を受けたりすることもありますか?

:結構僕はいろんなところに行って、有難いことにいろんな人と話しています。もちろん今のシーンを築いてきた先輩と話して得るもの、気付くもの、僕に足りないものもいっぱいあって刺激になっています。
それと同時に同世代やさらに下の世代の人たちもやりたいことを明確にある人が多くて、そのために1歩ずつ頑張っている人たちが多いです。ライブハウスの視点だけでは気付けないこと、例えばSNSでどうやって広めるかとか、自分より長けている部分を持っている人がめちゃくちゃいて、交流することで刺激や気付きをもらっています。

:最近はライブハウスをあまり経由せず、SNSで話題になってサーキットイベントに出るアーティストも増えていますが、そういった出会いはどう思ってますか?

:僕はライブバンドも好きですし、SNSでバズっているバンドも好きです。僕自身SNSで出会うことも多いですし。
現場にこだわるバンドもめちゃくちゃ好きなのと同時に、歴とかも関係なしにSNSで爆発して世の中に届いているバンド達とも一緒にしたいと思っています。
やっぱりバズっているのには何か理由があると思いますし、普段からSNSはしっかりチェックしてます。そこが全てイコールではもちろんないですが、そこにお客さんの求める需要はあると思うので。

:ライブハウスで働きながら、やはり世代的にもSNSというものに抵抗はない。

:全くないですね。今回の出演者も全組バズってほしいと思いますし、だからこそ生の感動というのもお客さんに味わってほしいと思って必死に宣伝しています。

 

これから

:ZERO NENは絶対続けていくイベントになるので一度きりでは終わらないです。
そして今までの形やサーキットだけなく、また違ったアプローチのイベントもしたいと考えています。

:続けていくことが大事だと。

:継続していくことが大事だと思いますし、今年出たバンド達が成長して大きくなっても、帰ってこれるイベントにしたいと思っているので、規模も大きくできればとも思っています。

Zepp Osaka Baysideでイベントすることも個人的には夢ですし、バンドにも夢があるように、制作の人間として夢に向かって頑張っています。

:裏方の人間としては、何がやっていて一番やりがいを感じますか?

:やっぱり見ていたバンドがサーキットで入場規制や企画がSOLD OUTしたりしてステージが上がって、多くの人に見てもらえて、世間から評価された瞬間は嬉しいですね。

:このご時世はコンテンツの消費スピードが速く、評価され続けるのも大変に感じます。

:そうだと思います。でも近道はないと思いますし、だからこそ確立された個性が大事ですし、それを継続して発信する重要性は若いバンドには伝えたいと思います。

:その中でホームは大阪で変わらずやっていきたい?

:はい。今、大阪のライブシーンはカッコいいバンドも増えて、面白くなっていると思います。大阪のためにしていきたい気持ちは強いです。

これからも交流を続けたいですし、バンドとの出会いもいつでも求めているので気軽に連絡してください。
「常に面白いことをし続けたい」ですし、「求められることをしていきたい」という中で想像超えてワクワクするような「みんなの期待を超えるようなイベントを組み続けたい」と思っています。
今回のサーキットもMOSAiCの佐々木さんとの出会いから生まれましたし、このイベントにしかない色は出てきているので、まずはこのサーキットを楽しみにしてほしいです。
ただのその先もたくさん楽しいことが決まっているので、楽しみにしててほしいです!


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