邦ロック最前線情報局

元地方勢の目線から、邦ロックの最前線を

今オススメしたいシンプルに最近の曲がいいなと思ったバンド

このアカウント始めて4年ですが、いやホントにインディーズバンドを巡るサイクルが年々速くなっております。
そうなってくると「新しい人物」に目が移りがちですが、ここは一旦落ち着いて「新作」を見て行きませんか。
あなたが思っているよりカッコよくなっているかもしれません。


Mr.ふぉるて

新作ミニアルバム『sweet life』すごくいいです。
稲生さんの繊細な観察眼・審美眼の深さが、彼らが注目を集めたきっかけでそこに刺さる同世代が多かったと思います。
一時期は加えてどこまでパワフルなバンドサウンドで「何としてもバンド力を刻み付けよう」という気概を感じていて、その過程でかなりムキムキになっているイメージです。
その進化をそのままに今作はバンドサウンドという枠に囚われない形でも表現したことで、深みだけでなく広さ、加えて色まで見えてくるような、聴いてるだけで視界が広がっていくアルバムに感じました。
『トライアングル』のように見えない死角やどうしようもないことへの理解、それでも変わらず巨大になった夜には死にたくなる気持ちも抱えながら、『幸せでいてくれよ』と誰かの涙を拭うように優しく叫ぶ終わり方が美しい。喜怒哀楽という便利な4文字では足りない感情にも温度を与えていて、『口癖』からはもちろん新作が出るたびに反骨心や優しさに説得力が強くなってると感じました。『愛慕』で見せた変化にはビックリした。
そこは演奏面でもタッチ1つ、弦1本から曲の世界観に沿うよう丁寧に作り上げたことも感じます。

最近は10代バンドをピックアップするムーブメントなので、ともすれば2018年に先陣を切ったようにも見える彼らは「目標」にされる側面もあります。
でもそれを引っ張っていくというよりは、聴いてくれる一人一人の人生に時に優しく、時に身を粉にしてでも寄り添う歌を書いていく不変の覚悟を感じます。


Mr.ふぉるて - 幸せでいてくれよ【Official Music Video】 - YouTube


PLOT SCRAPS

『水銀灯ウォッチャー』で知った時は、主食は光と水ですか?と思ったくらい潔癖的な透明性があるスリーピースバンド。
もちろん奥底にある感情の禍々しさや論理を超えた想いへの肯定もテクニカルなサウンドで表現するロックバンドと言える。
フォーリミも所属するNo Big Deal Recordsから全国デビューをして3年目となるが、その切れ味は鋭くなり、加えその世界観にとっつきにくさもない。
『一等星』はすぐにでもアニメ主題歌になりそうだし、新曲『Telephone Box』は公衆電話という(もはや)レトロな存在とニューモダンなバンドサウンドの合成し合いがより切なさと人の温かみの大切さを加速させる優しい曲。
また昨年MVになっていない曲で『オーダーメイド』という曲があるんですが、昨年も少し触れたんですがこれがとてもいい。あんまり「必然」という言葉が個人的には好きじゃないんだけど、この曲を聴くと自然に記憶の一つ一つが縫合されていく感覚があり「偶然じゃないんだな」と説得させられてしまう。

「クールな雰囲気で希望を歌う」という従来のイメージも強めつつ、言葉の熱はさらに高まっている。ライブでその卓越したものを見てみたい。


PLOT SCRAPS「Telephone Box」Official Music Video - YouTube


Ivy to Fraudulent Game

先述の2組は「しばらく追っているけど変わらずシンプルに良い曲作ってるから、もっと聴いてもらいほしいなぁ」という願望だったのですが、逆にIvyは僕が現在進行形でなんとなく彼らが出てきた頃にはハマらず、新曲聴いてみたら「え、こんな良いバンドだったの!?」と今なってるバンドです。以前こうなってたバンドはLAMP IN TERREN。
こういうことがあるから面白いんですよね。

とはいえ新曲の『旅人』『御伽』の2曲は、今までの「生命」とか「人生とは」みたいな壮大なメッセージソングと聴き比べても全然違うような気がする。こういうテーマを歌うイメージは変わらないんだけど、なんだか以前より曲だけがスッと入ってきて、聴いてて頭がスッキリするような感覚が不思議とあるのだ。優しくなってるけど尖ってるような。
『旅人』での「私と世界を討とう」という言葉の持つ圧倒的カリスマ性。間違いなくその言葉に誘われてパーティーの一員となるリスナーはもっといる。

Ivy to Fraudulent Game"旅人"MUSIC VIDEO - YouTube



まーとーめー

今はいろんな要素がミュージシャンには必要な風潮があります。
僕もライブ第一主義な人間でもないし非常に言葉にしづらいんですが、シンプルに最近この3組を聴くと内側から癒されました。
同じ感情を持つ人に伝われば何よりです。
それでは、この辺で。