邦ロック最前線情報局

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ずっと真夜中でいいのに。の居場所はYOUTUBEではきっとない

ずっと真夜中でいいのに。『正しい偽りからの起床』はいい意味で不完全で、安心しました。



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YOUTUBEで聴くのより、CDで聴くとACAねさんは、やっぱりまだハイレベルのクリエイター陣に引っ張られてるなと感じた反面、随所に歌声と歌詞の人間臭さのある独特なライブ感の強さで、そのクリエイター陣が屈服せざるを得ないくらいの熱量で曲を支配していました。

今まで"ネット発"の歌姫を従えたクリエイター、例えばsupercellClariSなんかも僕は好きなんだけど、そのどれもよりライブハウス出身感がありました。
ACAねさんの歌声は力強いとよく言われるけど、恐らくその理由は、元々想定して出している声量がイヤホンやPCで上手く聴かせるものではなく、素朴なライブハウスで50人も満たないような観客でも、手抜きせず、一生懸命歌を遠くへ飛ばしている類いのものだからじゃないでしょうか。

そういうライブハウス感が伝わる分、そして僕がインディーズ開拓をしている分思うんだけど、もちろんいろんな記事で紹介されているとおり、テクニカル的にも美しく力強い表現力もある歌声ではある、
けれど言ってもまだインディーズだし、このレベルの熱量を持つ女性SSWは界隈には実はたくさんいて、その一人ではあるよなと思った。
そしてクリエイター陣に曲が呑まれてるなと思う瞬間もありました。
でもそれは仕方ない。今年急に注目を浴び始めたばかりの女の子なんだから。
このご時世でも、実はあの人!っていう噂もなんもないので、恐らくそんなサプライズもないでしょう。


しかし、そのインディーズさがあるからこそ、ひときわ輝くものがあったなと思います。


不完全だからこそ無敵


まず、この方に惹かれる特徴はとにかく豊富な語彙力にあると思います。
外側から外側からあらゆる名詞や比喩表現で固めて固めて、言いたいことをより際出させて、深くまで届けさせる、実にインテリジェンスが高い作詞能力です。

その歌詞は豪華クリエイター陣によって、高価な機材でないと鳴らせない音で装飾されても、色褪せないくらい言葉自体の策略的な完成度があります。
絶対作詞家がいると思ってました。

そこにライブハウス感のある歌声が相間っている。このアンバランスさがいいです。

でもちょっとそこにハイレベルな演奏がプラスされると、少し作られた感が強いなとも思ってました。
YOUTUBEだけで音楽を楽しむ人にはそれでもいいと思うんですけど、やっぱりライブの楽しさを知っている人間からすると、そこが物足りないんですよね。


しかし『サターン』や『君がいて水になる』でその不満を解消させました。
他の曲にももちろん時折ありましたが、特にこの2曲はクリエイトしてるというより、ACAねさん自身の人間の不完全さや未完成さが強くさらけ出されていました。
『秒針を噛む』や『脳裏上のクラッカー』では、あれだけインテリジェンスで高性能さをまとっていたのに、一気に独りよがりな世界観になった気がしました。

だからこそ、ずっと真夜中でいいのに。という個性が引き締まった気がします。
なぜならこの不完全さこそ、若いインディーズアーティストが出せる"無敵感"なのです。

この無敵感の正体っていうのは、まぁいろいろあるでしょうが、「大人に触れられてないような無垢なメッセージ」のようなものです。
無鉄砲で、危なっかしさのある、やり直しのきかないもの。
でも大人になるにつれ輝きを増す、大人になって同じことはできないこと。

インディーズバンドが好きな人って、ここのある種突発的な若い輝きに惹かれるんですよね。
そしてそれが一番輝くのって、お客さんとゼロ距離で鳴る、汗の臭いが染み込んだ音質の悪いとこもあるライブハウスという空間なんです。
メジャーバンドにはメジャーバンドの無敵感がありますが、インディーズバンドの無敵感と比べても答えは出ない。どっちも最強で終わる話です。


『サターン』や『君がいて水になる』は、MVの曲に比べると地味かもしれませんが、それがパッケージされていました。
聴いてる時に浮かび上がる情景が完全にライブハウスでした。
MVの曲以上に、どんな状況で、ギター1本で歌おうとブレないライブな曲だと思います。

そしてそれはどんなクリエイターも絶対手を加えてはいけない領域です。
これを変にいじると、ACAねという今を生きるボーカルの人間らしさが死にます。それはライブを楽しみにするアーティスト・リスナーにとって、最大の悪手です。
それに陥るインディーズバンド、たくさん見ました。
ただこのアルバムでは、ACAねさんのその「ライブがしたい!」という感情がしっかり生きていて、そこが随所にハイレベルなクリエイター陣を越えた力強さが垣間見た理由だと思います。


この2曲はライブハウスで聴くとかなり胸を打つでしょう。
また、こういう曲があることで『脳裏上のクラッカー』や『秒針を噛む』にも、生モノ感がプラスされ、相乗効果を生んでいます。




まとめ


ここまで書きましたが、ぶっちゃけ全部妄想です。
情報収集はしましたけど、これだけライブハウス感がある!言って、本当に家から出たことない引きニートさんなのかもしれません。ライブもしたくないのかもしれません。


でもそれはそれで生命が迸るような曲をその状況で書けているのはスゴいです。


何より未完成でインディーズ感があることに気付いたから、これからずとまよ。にワクワクするのは、その伸び代です。


もちろんたくさんYOUTUBEに曲をアップすることでも磨かれていくのでしょう。
文中で少し嫌みな言い方だったかもしれませんが、マジで作詞のセンスはずば抜けていると思います。

でも、だからこそ彼女に関しては、どんどんライブに出て、対バンなんかも重ねて、その才能を伸ばしてほしいなと思いますし、これからはネット発のアーティストもよりそういうことが求められていくと思います。


やっぱりバンドを聴くような人間っていうのもあるのでしょうが、今からしっかりインディーズアーティストのストーリーらしいストーリーらしいを刻み、汗の臭いのするクリエイター集団になってほしいですし、なりそうな気がしますね。




それでは、この辺で

サターン

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