いつも紹介している、
インディーズバンドには該当しないけど、
このバンドをもっと聴いてもらいたい。
そんな思いで書くブログです。
新作アルバム『孔雀』は、
オリコン31位。
ワンマンツアーは完売だし、
最早オリコンの価値は、
ってのもあるけれど、
「低すぎぃ!!」
と思えるほどの名盤であった。
米津玄師のLemonとまではいかなくとも、
過去のアルバムの出来を更新してるし、
もっとメディアが騒いでもおかしくない出来だ。
実はこのバンド、
個人的にいろいろ不遇な面があると思ってる。
アニメタイアップに”抜擢”されたバンド、
10代で注目を浴びたバンド全体に言えるが、
そういうバンドには、
邦ロックリスナーの勘違いが蔓延りがちなんです。
今回はBURNOUT SYNDROMESを入口に、
そういうバンドの苦労を少しでも取り除くレビューになればいいな。
↑こんなイメージないでしょ
「ハイキュー!!のバンドでしょ?ロックって感じだよね~」
これは普通に音楽が好きな人。
アニメタイアップ。
しかもかなりの人気作。
代名詞確実となる曲を出す、
チャンスを背負わされたバンド、
BURNOUT SYNDROMES。
『FLY HIGH!!』も『ヒカリアレ』も、
今年の銀魂の『花一匁』も、
凄く良い曲である。
だからこそアニロックフェスにも、
選ばれたんだろうし。
ただインディーズ時代も含め、
アルバムを全ての楽曲から察するに、
このバンドの「らしさ」を計るには、
到底足りないのも、さもありなん。
アルバムを聴いたら分かるが、
BURNOUT SYNDROMESは決して、
バンドサウンドに頑なにこだわるバンドではない。
新作はもちろん、当初から
面白いアイデアをどんどん取り入れたいタイプらしく、
変拍子に打ち込みや既存のクラシックを使ったり。
実はベースはヒップホップ大好きで、
そういったラップパートも過去のアルバムの曲には多く取り入れているのだ。
しかし、前述の曲は爽快感溢れるロックチューン。
これでは10代に自殺の曲でコンテスト準グランプリを取ったバンドの本質には、やや触れ難し。
これは恐らくバンドとしての経験量の問題か、
「ハイキュー!!」という作品に対し、
「いかに多くの人に届けるか」というところで、
良い意味で悪い意味でも、
今できる行儀の良いロックを鳴らしざるを得なかったのだろう。
しかもアニメサイズは1分半、
公式MVもフル公開ではない。
これでは『I am a HERO』や『LOSTTIME』みたいに、耳が追い付かない速度で詩が降ってくるバンドとは、到底思わない。
こういった幻惑する言葉の応酬は、
新作アルバムにも健在だった。
『POKER FACE』など。
「純文学ロック」という触れ込みで紹介されるバンドなのに、
ハイキュー!!の”OP尺のイメージ”で語られる…
しかも1曲ではなく、2曲。2曲て。
純文学の対極とまでは言わないかもしれないが、
アルバムには感じないスポーティーで爽快感なイメージで語られてしまうことが多くなる宿命。
熊谷さんは、そんな明るい側面だけでは語れないのでは。
(…いや一番いい笑顔してるな)
アニメタイアップ最大の成功例バンド、
UNISON SQUARE GARDENは、
その後の活動以前に、
TIGER & BUNNYの時には26才で、
メジャーデビューして数年の経験もあり、
既に曲に多様性を見せていたので、
(あと田渕さんのアニメオタクが凄くて)
その後、なんとかなったが、
当時23才で、これでメジャーデビューのBURNOUT SYNDROMESには単純に時間が足りない。
「 卓越した文学センスで、圧倒的な世界観を作ります。聴いてないけど」
これは真のにわか。
まぁにわかがいなきゃ、フェスは成り立たないけどね。
10代で閃光ライオット準グランプリ、
名門大学在学中にワンマン完売&多くの大型フェス出演&全国流通作品販売、
そして「ハイキュー!!」「銀魂」タイアップ決定のまだ25才…
うーん、輝かしい経歴。
いや人間としてもバンドとしても成長過程の時に、
注目される苦しみも相当辛いし、
熊谷さんは大学を中退してしまってる。
それはもちろんユニゾンくらい、
ライブハウスで熱く頑張ったのも絶対あるし、
若くして売れるということは、
音楽のみに捧げている人生なのは、
インタビューなどを見ても明らか。
しかしそういう【共感】を簡単には得られないのが、
若くして注目を浴びるバンドの辛いところ。
やっぱり自分の苦境に重ね合わせるところがあるから。
順風満帆と思われちゃ、インタビューとかも見ないしね。
その結果、共感よりも、経験値にそぐわない、
「期待」が先走り、無駄にハードルが上がる。
最初に出た”にわか君”のようにね。
(まぁ僕もにわかの最高峰だから、音楽紹介なんかしてるんですけど。分かりました、切腹します。)
まだその期待が、4つ打ちバンド的な期待なら、
テンションで騙せたかもしれない。
しかしバーンアウトのイメージにかかる期待は、
米津玄師やamazarashiのような暗めで圧倒的な世界観への期待。
正直【純文学ロック】という触れ込みと、
顔とかあんまり見せない【アー写の雰囲気】だけで、
そういう判断をされる。
(結構Twitterで、やんややんやしてるけど。)
BURNOUT SYNDROMESには、
このような「きっとこういうバンドだろうな」要素が、
アニメから、コンテストから、経歴となんとなくの雰囲気からと、とにかくいろんな角度から、
「じゃあもう聴くまでもないか」と様々なバンドよりなりやすい。
「才能溢れすぎてそうだから共感できなさそう」「なんか難しそう」「もう今更聴くの遅そう」と。
実際、シーンにおいても一匹狼感もある。
共有が大切なフェスブームには逆行してるイメージも持たれているだろう。
意外なBURNOUT SYNDROMESの持ち味
ただバーンアウトの歌詞は、
米津玄師やamazarashiの世界観と実は違う。
非常に「学」を感じる唯一無二の世界観だ。
それは出身大学とかではなく、
歌詞には、5教科の教科書で習う言葉とか、ネットスラングのような言葉、商品名、小説の1節を引用したような言葉など出てくる。
このバンドは、そんな存在する名詞という名詞にリズムを与え、
これでもかと曲に落とし込むのである。
まさに語彙力の化け物だ。
歌詞を大切、にもいろいろあるわけだ。
それは米津玄師やamazarashiのように、
全てを信じられず、1回死の世界を見てきたような人だから書ける、
心を揺さぶる美しい音楽とは違う。
あのレベルには、なかなか辿り着けない。
ただそれを補うレベルの「なるほど!言葉の配置が凄い!」という楽しみがあるのだ。
よく文豪と言われるが、もっと現代的だ。
僕は歌う百科事典に思える。
たしかに生々しい感情を吐露する歌詞と比べれば、
少しクールすぎるかもしれない。
でも、社会と断絶していた人には書けない、
真面目に勉強し続け、生きてきた人だからこそ鳴らせる音楽だ。
これは境遇含め、実は僕達に一番近い音楽なのではないか。
そしてここからがタイトルの話(遅ぇよ)(縛るぞ)(動けなくしてから、ポテチ食べた手でメガネ触るぞ)
邦ロック好きにとってカラオケは難関。
しかも大学生や社会人になったら年齢層も様々。
こういう時にKEYTALKやオーラル歌っても、
「へー、いい曲だねー」で、
終わればいいほう(大抵は無視)。
フェスのお約束なんか誰も知りません。
しかしBURNOUT SYNDROMESの歌詞は百科事典。
馴染みある言葉が歌詞となっている。
頭良い人の前で『文学少女』を歌えば、
「なんかいろいろ文学作品出てきた(笑)」となります。
オタクっぽい人の前で『ハイスコアガール』『君をアンインストールできたなら』を歌えば、
「なんかいろいろコマンド出てきた(笑)」となります。
そしてアニメ好きに『ヒカリアレ』『花一匁』歌えば、
「あ、聴いたことあるかも!」となります。
他にもサッカー好きには『LOSTTIME』、
クラシック好きには『雨』『ヨロコビノウタ』などあります。
しかも前述のように、
畳み掛けるようなラップパートやツインボーカルパートがあり、
それをするだけで盛り上がることもあります。
(新曲『Melodic Suffer』なんかは、それに特化した感じさえあります。)
そして何よりすごいのは、
もしこれで興味を持つ人がいたなら、
『セツナヒコウキ』や『月光サンタクロース』は、シンプルに名曲なので引き込めます
カラオケはこのデジタル時代に、
歌詞に触れられる貴重な機会。
そのチャンスを活かせずして、
文学的ロックバンドは語れない。
燃え尽き勢には、カラオケを頑張ってもらいたい。
僕も練習するからさ。
あ、誰も一緒に行ってくれないのね…
まとめ ~若くして売れるバンドがイメージ通りで終わるわけがない
実はBURNOUT SYNDROMES、
僕も最初は敬遠してました。
特に理由はなかったんですが、
既に完成してるイメージがあったんですね。
だからまぁ今更、自分のための音楽にならないかなと思ってたんです。
僕は去年の今頃に熊谷さんの声をたまたま聴いたとき、
全然イメージと違ったんで、
そこで初めて気になって聴いてみて、
今、ワンマンの応募もするレベルです。
だからもし、BURNOUT SYNDROMESを聴いたことないなという人は聴いてほしい。
他にもこういうバンドはいて、
- 10代から「BUMPすぎるww」というイメージと闘う、phatmans after school
- いつまでもほんわかとしたイメージの強い、ねごと。
- 日本人離れでインターナショナルなイメージのOKAMOTO’S
ここらあたりも若くから活躍してるゆえに、
「イメージ」で語られることの多いバンドだと思う。
しかし最近のphatmans after schoolは力強いロックサウンドが武器だし、
ねごとはかなりサイケでダークなサウンドが増えてるし、
OKAMOTO’Sは友達が好きなのでよくライブ見たが、初見でも誰でも100%ノれる。
聴いてもらう工夫が足りないと言えばそれまでかもしれないが、
どのバンドもパワーアップはしている。
早めからのメジャーデビューゆえに、
いろんなサウンドを若くから装飾し、
バンドとして迷走している風に見える時期が、
他のバンドより目立って見えるかもしれない。
しかしそこを乗り越えて、なおメジャーに生き残るバンドは本物だと思う。
また、インディーズに戻ったしても、
そこで改めて解き放たれて強く輝くバンドもいる(The Mirrazや東京カランコロンなど)
BURNOUT SYNDROMESの『孔雀』は、
早くもそんな本物だと言えるアルバムだった。
先取りなんて名前してあれですが、
ぜひこういった既にあるイメージと闘うバンドの様々な楽曲にも触れてみてください。
燃え尽き勢はカラオケで安心して広めてください。
一応何曲かは実証済です。
それでは、この辺で。
- アーティスト: BURNOUT SYNDROMES
- 出版社/メーカー: ERJ
- 発売日: 2018/02/21
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