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CLAN QUEEN新アルバム『NEBULA』レビュー。あなたの中に流れているものを問う



CLAN QUEENが2nd ALBUM『NEBULA』をリリースしました。

ワンマンライブ、出演イベントは各所完売し、大型フェスでもその名を見ないことのほうが珍しくなりつつあります。
新世代のアートロックを武器に、音楽シーンを席巻していると言っていいでしょう。

そんな彼らの待望の最新アルバムを聴きました。
まず通しで聴くべきです。
配信シングルの聴こえ方が変わります。
なぜ『紙風船』のような質感の曲があるのか、
『自白』と『ゲルニカ』の間にある『Apophenia』があることで変わる2曲の感想、
『PSIREN』を最後に持ってくる必然性とか。


前回の『VeiL』は、どちらかと言えばファンタジーを感じました。
なので前回のレビューの時は、割と賑やかなレビューをしました。

ただ今回はもっと"現代病"や現実世界の不安定感を描いているように思います。
なんでしょう、実はちょっと胸糞に感じたところもあります。いじめとかパワハラとかSNS依存とか、ハードな問題を扱った学園・社会派ドラマを見た時の視聴感にも似ているかもしれません。
しかしいたずらに暗いだけでなく、やはり日本の音楽シーンの主流をいくためのエンタメ性もあります。
考察しがいのあるセンテンスとパッとイメージができるワードのバランス、yowaとAOiでボーカルの役割がよりハッキリとした感じもあって、無駄がなく置いていかれない。
もちろんその土台となるリズムをマイが音像だけでなく、MVの映像でも沢山作っているので、既存のCLANSも新参CLANSも楽しみ方豊富。
深夜ドラマではなく、ちゃんと地上波22時帯に流せるドラマになっています。

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少し中身の話をすると、5曲目に『救世主』が現れるタイミングが絶妙です。
品も創造力も侵食されて干からびかけた自分に「最上級の愛」「反則級の言葉」を通して、数値や規範から逸脱した気持ちという名の水分を与えます。
それをエンジンに狂ったような『SPEED』を出す。ここで無敵感の熱が生まれるのがアルバムのドラマに展開を生む。
ただそれでも運命の輪廻からは逃れられず雁字搦めのまま。所詮ダニンググルーガー効果が生んだ一時の高揚感だと知る。
水分が底をつき、この世は全てこうだと理解せざるを得ないと悟った時、虚無から本当に宇宙ネコのような顔になります。



そこで選んだ選択こそが全ての『自白』。
全て吐き出した残ったのは自分というヒト型の容器。
でもそれすらもアダムとイヴのサンプリングという事実。
しかしそこにまだ残る孤独と体温、傷。そこから生まれた言葉と掠れた叫び声。それは怪物の産声。新たに容器に溜まっていく水分。その時に思った。次は君を乗っ取ろうか、と。

1曲目『チェックメイト』とラスト前の10曲目『ゲルニカ』は似たような曲だと思いました。戦争も比較も始めた時点で負けなんだと。ただそれを思う中身は変わってしまったなと。

そんなことを繰り返す水槽を俯瞰で見ているのは、誰。
それに薄っすらと気付き、また終わらない旅を始めるのであった。

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誰しもが持つであろう葛藤や彷徨いを、成長するCLAN QUEENを通して届けるために、チームが費やした時間の密度は相当なものに違いないです。身もだいぶ削ってるでしょう。何度も宇宙ネコのような虚無感に襲われたでしょう。
あぁ、だからそれを表現したライブが終わると、3人も解放されたような姿を見せるし、僕らにも解放感があるのでしょう。
私たちが先の見えない靄の中を歩く先で、またCLAN QUEENと同じ時間を過ごせる可能性があることは、人生という旅を続けるのには十分な理由になる。そんなことも示してくれたアルバムでした。