「部活ができない!」
今、学生がそういう状況になっているのは容易に想像できます。
少しずつ始まってるとはいえ、授業どころか登校もままならないのに部活なんてしづらいし、成果発表の場もない。
部活と聞くと、まず高校の運動部を想像する人も多いけど、もちろん文化部も大変で、大学の文化部も大変。そしてその大学の文化部といえばそう、軽音楽系の部活、サークルである。
大学生の課外活動、部活とサークルの差などを語り出すと、大学時代に大学生の課外活動についての卒業論文で学部3位の僕の血が騒ぎ出すので熱弁は避けるけど、それくらい課外活動を頑張ってきた人間からすると由々しき由々しき由々しき事態である。
そしてその学校の軽音楽系の部活が止まると困るのがライブハウスである。
シンプルに部活の公演がないのが売り上げ的に痛手というのもあるけど、これまで積み上げてきた学生の音楽の歴史や伝統も止まるのではないか。この不安も莫大なものがある。
そこで立ち上がったのが学生の街と言われる京都でライブハウスを経営する2人。
京都GROWLYを経営する株式会社ケイピーエス代表取締役角田恭平さんと元京都Voxhall店長有堀誠さんです。
有堀さんは毎年学生限定のサーキットフェス「MIYAKO ROCK FESTIVAL」を京都で開催してますし、恭平さんも自身が高校卒業して熊本から京都の大学に行った事が今の音楽に携わる仕事に繋がっておられます。
その2人が京都にいる学生を救うために、そして今後の京都の音楽文化を守るために、「京学バンドクラブ」なるものを立ち上げました。
その概要や思いについて首謀者の一人、恭平さんにインタビューをさせていただきました!
後回されがちな学生の青春について本気で考えている大人もいるんだよってことを知ってもらえれば何よりです。
※取材日は2020年10月1日。発表時には状況が変化している場合がございます。
※関西では大学生を1年生、2年生…ではなく1回生、2回生と呼びます。
1.京学バンドクラブってなんですか
恭平さん(以下:恭):まず設立のきっかけになったのはコロナです。少しずつガイドラインも緩和されてきて、今後収束して過去のものになったとしても、この1年間は活動できてないバンドがいます。特に3月・4月から動き出そうとしてたバンドは初ライブもできなかったりしていました。
昨日も初ライブっていう学生のバンドがいて、やっと無観客で配信でってなったんですけど、本来は3月くらいから始める予定でした。そのバンドはずっと今日まで活動意欲の炎を燃やしてくれていたからよかったんですけど、本来だったらもう月1回はライブこなして、もう10回目くらいになっててもおかしくなかったんですよね。
でもそのバンドの世代からすると、もうこれが当たり前な感覚になるんじゃないかと不安が芽生えました。ライブハウスでの活動は感染の可能性があるよね、止めとこうか、みたいな。
これはマズいぞ。3月は本来学生サークルの利用で繁忙期で、月の半分は卒業イベントで埋まりますし、大学という括りでなくてもメンバーが学生だったバンドが4月から社会人になるからその前に企画打っておこう、ツアーで行っておこうという事が3月はあるんですけど、この伝統のイベント達が100%戻ってくるのか不安になったんです。
そうやっていろんなことを考えてると「サークルやばいな」ってなったんです。
今年は見せ場や目標となる文化祭もないところも多いですし、1回生の入部新歓イベントも全くなかったんですよね。というかそもそも1回生が入れてない。そりゃ学校も通えてないですし。
で、一番救いたいなと思ったのはその1回生だと思ったんですよね。その1回生が何もサークルに触れられないとなるとそのサークルの文化も衰退しますし、最後は業界全体に響いてくると。
そこでここで垣根を超えたインカレサークルを作ることによって、学生の新たな活動の場としてプレイヤーが増えることにもつながりますし、それはリスナーも増える機会になると思ったんですよね。このサークルのバンドが見たいというところから、初めて京都のライブハウスに来るという人もいると思いますし。
遊津場(以下:津):ということは裏を返すと、このコロナのピンチをチャンスに変えたい気持ちもあるということなんですね。
恭:そうですね。例えばこの活動に参加してくれる部員募集してる中で、前からGLOWLYを利用している大学もあるんですけど、初めて名前聞いた学校もありました。
調べたらすごい小さい大学でHP見るとそもそも軽音サークルもなかったんですね。ということはコロナとか関係なしに活動したくてもできない学生も元々いると。そういった人達の受け皿・交流の場としての立ち位置になれそうで、やってよかったなと思いますね。
津:僕も本業の職業柄分かるんですけど、部活やサークルが少ない大学や専門学校って結構ありますよね。そこで燻ってしまっている人たちにも知ってほしい場所ですよね。
それではそんな入りたい人が知りたい情報であろう、
現在の入部状況はどういった感じでしょうか?
恭:10月1日現在(最新情報はホームページで!)、
- 人数…19人
↑男女比は名前しか聞いてないので正確には不明ですが、恐らく半々。 - 参加する学生の大学・専門学校の数…12校
↑ほぼほぼ被ってない!結構1人で飛び込んできてくれている。 - 学年…1回生4人、2回生9人、3回生4人、4回生2人
- パート…バラバラ。ドラムが一番多い。キーボードやピアノも。
津:ドラムは部活において引く手数多って聞きますし、そして一番精神的にもフリーな2回生が多いってことは、活動したくてたまらんっていうドラマーが多いってことなんでしょうね。
恭:そうですよね。ドラマーは本来は組むバンドには不足してないはずじゃないですか。それでもこれだけ応募してくれるってことは、学内で「やろうぜ」って雰囲気がないってことなんでしょうね。
津:もちろん部員はまだまだ募集してますけど、なんかいい感じの規模感ですね。
恭:まぁただ後期も始まったので、これからのトライアル期間でどうなるか分からないところはありますけどね。
津:その中でどういうスケジュールで動きたいというのはありますか?
恭:一応ざっくりとホームページに書いています。応募終わった後の何回かのミーティングの日取りは決めてるんですけど、そのミーティングで決めていくことも多いと思いますね。
津:そして今回、クラウドファンディングも実施されています。
恭:クラファンを始めた理由は2つあります。
1つはおじさん2人がやっている得体の知れないサークルと思われてるんじゃないかと(笑) 。
そしてもう1つは学生さん自体もアルバイトを削られてお金がないんではないか。
ただ運営するにはどうしても部費が必要なんで、最初の入部者の部費を0円にするためのクラウドファイティングをしています。
やっぱり僕みたいに部活やサークルの出会いが今でも良い思い出として残ってる人もいると思いますし、そういった大人達も参加できるような形を取りたかった。
リターンに関してもTシャツというグッズもあるんですけど、基本的には参加型のプランを用意しているので、一緒に歴史を刻みたい方の参加をお待ちしております。
もちろん本当は会社の事業としてやっているので何もなく0円でできればと思うんですが、存続させること考えたり、あと例に漏れず弊社も大ダメージを受けてますので‥
部員はありがたいことに増えてますが、クラウドファイティングはまだ目標に届いていませんので、どうかよろしくお願いします。
☆京学バンドクラブにはHP、Twitterもありますので、そちらのチェックもお願いします!
HP:
京学バンドクラブ | 「京学バンドクラブ」は京都の大学生・専門学生なら誰でも入れるインカレ軽音サークルです。 京都にある大学に通う学生、もしくは京都在住の学生が対象です。
京学バンドクラブ(学校の垣根を飛び越えた軽音サークル) (@kg_bandclub) | Twitter
クラファンページ:
大学の垣根を超えた軽音サークル[京学バンドクラブ]第1期生の部費0円プロジェクト - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
2.質問コーナー
津:京学バンドクラブの1番の違い、メリットはなんですか?
恭:1番の違いはもう現段階で12校も参加していて、学校の垣根を超える活動になるってことですね。本来の大学のサークルにも大学同士でのジョイントコンサートはあるんですけど、基本年に1回とかなんですよね。それが主になるという状況は1番の特色です。
あとは運営元は音楽をやっている会社なので、学外で捉われないイベントもどんどん作れるんじゃないかと思っています。それは学内での活動とは違ったかけがえのない経験はできるんじゃないかと思います。
津:学校内の部活やサークルですと、各々のやる気って結構違ってて。プロ意識ってほどでもないけど、音楽にもっと取り組みたいみたいな人もいて、そういう人達にとっても新たな刺激ももらうことで、自分の立ち位置や今後の新たな将来の道が開いていけば良いですよね。
恭:ただハードルを上げたいわけでもないんですよね。オリジナルである必要もないですし、気負ってほしくはない。
やっぱこの現状の中で思い出を作ってほしいというのが強くありますし、その中でオリジナルでライブ、CD制作もできたらそれはそれで助け合っていきます。
どうしてもハードルを高く見られるとは思うので、うまいこと敷居のバランスを取ります。
津:そういった垣根を超えた人を集めると、継続性やモチベーション維持も大切だと思います。
恭:正直手探りで、やっていく中で予想外の問題も出てくると思います。今の若者ゆえの悩みも知っていくことになるでしょうし。
ただまずは4年!4年経てば全ての京都の大学生にとって「京学バンドクラブがある」という状態になっているということなので、それまでは壁にぶち当たりながらも伝統を作っていきたい。各々その音楽センスや考え方の個性は尊重していって、いい意味で文化系のノリというのは大切にしたいですね。
津:結構大学だと特に文化系は顧問はいてもほったらかしで、結局部長や幹部が抱え込みすぎるというのもあるんですが、そういった時に業界人の恭平さんや有堀さんがいるというのは強みかもしれませんね。
恭:普段から若いバンドとは関わっているので、感覚がかけ離れているということはないと思います。ただサークル運営となるとまた別問題なのかなと思うところはありますよね。
津:またサークルとなるとやはり「集まる」ということは出てきます。
その中でコロナ対策はしっかりされると思うのですが、大学や親にどう理解を求めていきたいというのはありますか?
恭:難しいところではあります。今回高校生はさすがにお断りさせていただいているんですけど、大学生や専門学生はどこまで活動を縛られているものなのか判断しなくてはならない。
半分大人でもあるという自覚を持つという意味では自分でいろいろジャッジして決めてほしいですが、そこはこちらも指針となるものを作って慎重に対応していきたく思います。
津:一番嬉しいであろうパターンは、せっかく京都で一人暮らしを始めたのにずっと家にいて友達できず、部活にも入れずという面を心配している親が、「京学バンドクラブで友達できたよ」という知らせで安心してくれることですかね。
恭:もちろん親御さんの職業とかでもコロナの考え方って違うと思うので、しっかりヒアリングしていきたいですね。最初は本当にしっかりヒアリングを大事にしていきたいです。
あとは自分が大学中退したから分かるんですけど、今の若いバンドマンにも「大学はちゃんと卒業したほうがいいよ」とは伝えているので、学生の本分である勉強も疎かにしないようにしてほしいですね。
3.今後の京学バンドクラブの目標・夢
恭:1番目先の目標としているのは京学バンドクラブ主催のフェスをやりたい。これは来年の秋くらいの開催を目指しています。
でもまずは「京学バンドクラブあってよかったな」という状況にしていきたいと思います。
これはコロナとかは関係なしに、今後の少子高齢化で大学もサークルも減ると思うので、そういう時に駆け込み寺のような立ち位置で残れたらと思っています。
ゆくゆくは京都からシーンの要になれれば。
津:ちなみに京都のそういう大学の軽音部やサークル出身の有名なバンドって、どういう方々がいらっしゃいますか?
恭:くるりは立命館大学のサークルからですね。他にもインディーズなら浪漫革命もそうだと思います。
津:京都出身のバンドやシンガーは多いと思いますけど、基本的に大学から始めるというのが多いですかね?
恭:そうですね。うちに出演し始める京都の若手バンドの8割以上がサークルきっかけで組んだバンドです。
津:大学から音楽始めても全然遅くないということですかね?
恭:全然、全然遅くないです。
津:ありがとうございます。
最後に1大人として、18〜22歳の代にメッセージがあれば!
恭:もちろん勉学という本分も大切にしながらなんですけど、この京都という地の文化というものは「学生から」というものにならないといけないというのは、この業界に15年いて強く思います。
そういう文化に触れることで視野が広がり、高校までとは違った世界に足を踏み入れることで、生きていく選択肢が増えていくというのが大切だと考えますし、それが大人への一歩だと思います。
その選択肢が増えるきっかけにこの「京学バンドクラブ」がなればと思います!
そして最後にまたお願いになるんですけど、今回のクラファンって最近のライブハウスのクラファンとはちょっと違うと思います。
存続というものではなく、新しいものを創る、未来への投資というものなので、そこに対してより「考えていただく」というのも必要になるんです。ラジオや新聞でも発信させていただきましたが、このインタビューが1つのきっかけになればと思います。