邦ロック最前線情報局

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あえて語彙力のない、ウソツキの新曲がカッコいい

ウソツキの新曲『名もなき感情』が素晴らしい。


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ウソツキといえば、そのいい感じに現実的と空想的が重なった歌詞によって、絵本やSF系子ども向けアニメみたいなワクワクする歌の世界が武器にもう4年ほど、ロックシーンの主流で戦う"歌ものバンド"。

過去のリード曲の題材にしても、
じゃんけん、金星人、旗揚げ運動、銀河鉄道と、
バラエティーに富んだ題材から、美しいメロディに乗せて、美しいメッセージを発する。

ウソツキ - ピースする(MV) - YouTube

↑じゃんけんで世界の命運が変わる歌



まぁ告白を後押しする曲のために、曲の中の主人公を1万回フラレさせてるし、東京は別の惑星にするバンド。

切り取った風景は何気ないかもしれないけど、それを深める特筆な感受性を経て放たれる曲は、人によっては心に絡み付いてなかなか離れないバンドだろうなーという印象だった。

ウソツキ - 一生分のラブレター(MV) - YouTube

↑告白のコスプレ大会




そんなウソツキが今年3月、


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↑これから



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↑こうなって

ウソツキ - 恋はハードモード(MV) - YouTube

↑こう


いや、ちょっと遊び心が爆発しすぎじゃない?ってなった。

星新一かと思って本を開いたら、土竜の唄だったくらいの衝撃。
「よく聴いてみればウソツキ」?
おいおい無理すんな。


しかし何かを変えるためでも、ここまで振りきれるバンドとは思わなかったので、曲云々より、そのスタンスに興味を持つように僕はなった。
その後に『夏の亡霊』という、前述のような世間的なウソツキなイメージに近い曲(+新たな大人っぽさ)で見事バランスを取ったし、こんな引き出しもあるんだーと思った。



しかし、ウソツキの引き出しはこんなもんではなかったのである。

ウソツキ - 名もなき感情(MV) - YouTube

あの歌詞の物語性と深みに定評あるウソツキの作るサビの歌詞が、

「バーン!」「グーっ」「ぎゅー」「ずきん」「ビビっ」「どかん」


宮川大輔ばりの擬音使いである。
他にも曖昧してるとこも多く、あれだけ美しかった比喩表現も、心の中では雄弁な一人語りな感じも強くない。
また『ピースする』のような重いテーマではない、日常系のラブソングである。

しかしウソツキ史上、かなりドスンと心に響いた。

また『恋はハードモード』と違い、ウソツキ従来の優しいバンドとしてのリズムさばきをしている。

しかしウソツキ史上、かなりドスンと心に響いた。のだ。

それには間違いなく『恋はハードモード』を一度リードとして経由したことも関係していると感じる。



ウソツキにしか作れない「逆手な」名曲


全部にわかな目線で語るから、意外といろんな曲があるのかもしれないけど。


まずこの曲って一番で突然、竹田さんが間の抜けた声で「あ?」「え?」とか言う時点で心が掴まれるんだよね。

でもそれも『恋はハードモード』があるとないでは意味が違うだろう。
真面目な歌もの系と言っても、MVはコミカルなものが多かったウソツキ。
なので、ある程度面白い取り組みをしても、「まぁウソツキだったらこれくらいの面白さなことをするだろう」と今までなら勝手な尺度で図られたと思う。まぁまたクスッと笑える程度だろうなぁという。
正直、そこまで新しさを期待できない楽しい歌なのかな?と今までなら思われてたはず。

しかし『恋はハードモード』で1回とんでもない変化を見せているので、そのウソツキに対する図りがバグってしまった。
なので、ちょっとの変化でも「お?今度は何?」と引き寄せられてしまうのである。特ににわかな僕は。

そこで畳み掛けるような早口なBメロ。
早口は今までなかったわけではないが、やっぱり今回はいい感じに掻き立てる役割として大活躍している。


そしてサビであの大爆発!
まさかあのウソツキが「言葉にならない感情」を、本当にそのまま言葉にしないで伝えてくるという裏切り。

これは本当にウソツキがここ4年ほどで、シーンでしっかり歌ものバンドとして、結果を残してきたからこそ、逆に通用した歌詞技術である。
結局、感情の名前を「愛」ということにはしてるけど、本音はそれ以上の既存の歴史には書かれていないくらいの気持ちなんだ!という熱が見事にこもっている。
その理由は、MVの彼の名演技もこの歌詞の強さを引き立ててくれていることも忘れてはならないが、文学的と言われているバンドが手を打ちそうで、あまり手を出していない「擬音」というところに着目したからであり、また新しい歌詞の強さを発掘したような歌詞である。

語彙力をあえてなくすことで、伝えたいメッセージをより明瞭にする。
これは根底にしっかりとしたセンスがあり、かつそれを磨き続けないとできない。

そしてこれは相当な技術とはいえ、数多いて抜け出せずにいる「文学的な歌詞が魅力のバンド」にとって何かヒントになるのではないだろうか。


また早口のBメロから弾けるようなサビという構成自体はオーソドックスだけど、今までのウソツキの一般的なイメージと、やっぱり『恋はハードモード』で選択肢を広げていたので、やけに新鮮にも感じる。
それに加え、あのシンセも含めた音の重なりと、声の抑揚の付け方は、数年、有名な事務所(UK PROJECT)に在籍し、結果を求められてきたバンドでないと出せないことは、インディーズを発掘するアカウントとして言っておきたい。


まとめ


ここまでウソツキ書いて褒めてきたから言うけど、正直ウソツキって、例えばtacicaのように20年くらい勝ち抜ける息の長さみたいなのは感じない歌ものバンドに思ってた。

『一生分のラブレター』がスマッシュヒットはしたのだけれども、あれは今までのウソツキの集大成的な感じだし、他のMVでヌードになったり、いろいろYOUTUBEで展開をしたりもしてるものの、特筆すべきものにはなってなかったりしてて、デビュー当初の絵本のような歌ものバンドのイメージが固定されてて、今後の手をこまねいて迷ってるよう感じた。

にわかから見てると、見た目やキャラクター性も特徴があるわけでもないし、これから下からの突き上げに対して、どういうことをするのか。
そこに対して『恋はハードモード』を発表したとき、「あ、壊れた」と正直思った。
とりあえずUKにはいないタイプのバンドになろうとしてる、と。


しかし今になってみるとそれは大外れ。
『恋はハードモード』でしっかり自分達で自分達の枠をぶっ壊し、『夏の亡霊』で安定感と大人らしさを見せつけ、この『名もなき感情』で真のチャレンジ精神と進化を見せつけている。

もちろんアルバムを作る段階でどこまで考えていたかは分からないが、どうやら前アルバムの『惑星TOKYO』の時から、やりたいことをとにかくするモードに入ったみたい。
しっかりここまで先を見据えた展開での、この『名もなき感情』はファンのみならず、にわかをも驚かした。
事務所の先輩[ALEXANDROS]、BIGMAMAに劣らない個性があることの証明である。


今までこのブログで、BURNOUT SYNDROMES、コンテンポラリーの生活(ネクライトーキー)、め組という、ありがたくも勝手なイメージによって良さが全開で伝わりきってない、もっと売れていいバンドを紹介してきた。
その中にウソツキも入れていいだろうと思わせるトドメの『名もなき感情』だし、じゃあアルバムはどんな曲群なんだ?と単純に気になる。
実際トレーラーの時点で、一皮むけたようなきらびやかさがあります。

きっと今まではウソツキの紡ぐ曲にワクワクさせられていたけど、今後はウソツキというバンドの存在自体にワクワクさせられるようになる。そんなアルバムだと期待できるし、そうなればライブ行く人、CD買う人も増えて、下からの突き上げを跳ね返すだろう。



もし今、名前は知ってるけど、なんかバンプっぽいやつでしょ?でイメージが止まっているなら、是非とも聴いてみてほしいですね。
そういうバンド、頑張ってほしいんですよ。






それでは、この辺で
思いっきり手の平で転がされたわー

旗揚げ運動

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