「名前は聞いたことあるけど、音楽聴いたことはないかも」が、なんとなく一番ありそうな若手バンドはめ組じゃないかと思ってる。
元々ROJACKで優勝した「さよなら、また今度ね」で活躍していた菅原さんが、休止中に(後に解散)新しく作ったバンド。
そのさよ今の時から、恐らく相当ロッキンジャパン社のお気に入りで、主催のイベントに次々抜擢され、『JAPAN COUNTDOWN』のテーマソングにもバンドが変わっても何度も使用されていたイメージがある。
と、書いてしまうとゴリ押し感のあるバンドと思われてしまうし、
実際そういう背景がありそうってだけが原因で聴くのを後回しにしているロック好きがいる少し気の毒なバンドだと感じてる。
意味もなく、自分が見つけた感があるバンドじゃないと応援しないとこ、バンド好きにはあるから(誰だ、まさにお前だろと言ってる奴は)。
そういう人に「いやいや、め組の音楽は素晴らしいよ」と伝えるためのブログになればと思います。
タイトルの千鳥は後で出てきます。
MVは和牛使ってるのにね。
何気なさすぎるワンシーンの切り取りを、どこまでも深掘りできるワードチョイス力
め組の切り取る風景は、
何気ない日常ではあるんだけど、
「え、そこ?」っていうとこまでしっかり描写して曲にしている。
ただそんな誰もわざわざそこまで描かないシーンを描くことで、その時の主人公の姿や心うちがかなり明確に想像させてくれるのである。
例えば
『お化けだぞっておどかして』
のAメロ
どうでもいい話題に
なんとなく分かり合える瞬間が好き
君の指がストローと楽しそうにしてる
僕はこんな時も いつか君が僕とじゃなくなるって
胸が熱く 汗かいて 気付いたら
タバスコかけすぎてた
この曲は恋人との別れの歌である。
タイトルやあまりにポップなメロディーからは想像できないかもしれないが、普通に聴いてもらっても、それは分かる。
なので大まかに聴いても、
「何気ない日々が幸せだったけど、常に別れの不安はありましたー」というのは伝わるので、
サビで「もう手遅れでした」と歌われても、全然流れとしては不思議には思わない。
だから太字の部分の歌詞は、
ぶっちゃけなくてもいい歌詞と言えなくもない。
ただこの太字の部分の歌詞があることで、実はすごく気まずい空気が2人に流れていることやそりゃ別れるわなという部分までが明確になる。
ストローやタバスコが出てくることで、
「別れ話の舞台はファミレスとかかな」と考えられるだけじゃなく、
何かを切り出したくても、どう言えばいいか分からず迷って、意味もなくタバスコをスパゲッティかなんかにかけてたら、思いの外めっちゃ出て焦る、
そんなダメ男な彼氏の姿を見て
「(そういうところよ)」というのを重い目で見て、「(早く言ってよ)」とイライラしながらストローいじりながらも待つ、大人な彼女。結局水かけられるし。
この歌詞があることで、カップルとしての力関係もより分かるし、
『お化けだぞっておどかして』のタイトルに、どれだけの楽しい思い出と彼氏側の失敗が込められているのかが分かり、ハッとできるし、後々の歌詞もいろんな視点で味わえる。
他にも
『500マイルメートル』の
2番Aメロ
傘はこのまま差さずに
まぶたを閉じて
腕時計してたの忘れて
時間が止まる
誰もいないか気にしながら
手と手を広げて
世界の屋根打つ雨のリズムに
合わせて
だっだっだ
水たまりを鳴らす!
これは片思いの曲だと思うのだが、
「本当に君が好き!」という気持ちが、腕時計を思い切り雨に曝して壊れてしまった後悔の気持ちを越えている。
にも関わらず、その気持ちを悟られぬよう周りを気にするし、他の部分では君への思いが叶わないことを雨のせいにしたりしている。
これだけで歌の主人公が、
普段の教室では「べ、別にあいつのこと好きじゃねーし!」と会話してるのが目に見えて、いかに恋愛下手なのかを想像させる。
このようにめ組の歌世界は、
誰にとっても何でもないところからストーリーを広げ、Aメロでの意外な言動が、サビや題名に関わったりすることで登場人物の指先から、心臓の拍動、キャラクターの背景まで顕著に実感できる歌がたくさんある。
歌詞をわざと曖昧にして、リスナーそれぞれの物語を当てはめてもらうほうが、ひょっとしたら共感を得られやすいし、何より万人受けしやすいはず。
しかし、め組は登場人物の背景まで思い浮かべられるくらい事細かに曲を描く。
「自分達の思い描く世界を全て伝える」スタンスと言える。
なんでもワンタップで、情報の迅速化が求められる昨今において、すごく挑戦的だと思うし、そこにサウンドを当て込んで伝えるのは、かなり難しいだろう。
ただそれを成功させているし、アーティストって本来、それくらいワガママなものだと思うし、作品はお客さんに忖度するものでもなかったはず。ライブはともかく。
そういうバンドに対して忘れかけてた、アーティストの表現力のセンスやテクニックに対する純粋な尊敬をこのバンドは若手でありながら思い返してくれる。
結局解散しちゃったけど、さよなら、また今度ねの時は、それを表現するための楽器スキルが足りないからレベルアップのため休止したはずだし、その反省を経て、め組は個性派だけど、すごくアーティスト性のあるメンバーを菅原さんは集めたと記憶している。
なので演奏力もとても高いし、菅原さんの歌詞だけでは、こだわりの強い「菅原ポップ」は完成していないから、この部分もとりわけもっと評価されてほしいな。
ここで千鳥の例えた件をしゃべる
そのセンスやスタンスのよさを恐らくロッキン社は早くから目を付けていた。
なので小さいステージながら、全国に向けてめ組という存在や音楽は発信されていたはず。
ただ正直、なかなかもう1つ上のステージに行けていないと感じている。
その理由はやはり展開や歌詞が綿密ゆえ、なかなかトリッキーな印象があり、1分ほど切り取られたり、最初のほうだけ聴くだけだと、あまり世界観が伝わりきらないのが1つ要因だと思っている。
サウンドもとても美しく、ライブもとても盛り上がるのだが、パッと見聴きのイメージでトリッキーなバンドと思われる。(注:色分け意味あります)
ただそれでも僕は、
このまま、め組は続けてほしい。
妙なフェス受けの曲をリード曲にしないでほしい。
その理由こそが千鳥のような売れ方すると信じてるからだ。
別にお笑いを音楽ほど詳しいわけではないのだが、千鳥も若い頃からM-1の決勝組に残る実力派だった。
ただその全国放送のM-1でするネタは非常にシュール、いや正直スベっていた。
結果も4度出て、最下位2回、8位、6位。
本来厳しい予選を勝ち抜いてきてるので、若手時代から生ライブはとても面白く、業界の評価も高かったらしい。
が、当時はTVが全てで誰も認知しておらず、M-1出てはシュールすぎて評価を下げる”日本一つまらない”漫才コンビになっていた。
(元スクールオブロック教頭のいるPOISON GIRL BAND説もあるが)
ぶっちゃけ、当時の僕も何が面白いか分からなかった。
しかも他の番組で見たときもシュールな感じで、大して爪痕は残してなかった。
事務所の期待に対して、相当歯がゆい気持ちになっていただろう。
それが2011年のTHE MANZAIをきっかけにこの磨いてきた「クセが強い〜」ボケが突然、国民のツボに入った。
この現象はM−1の頃のイメージを持つ僕には少し千鳥のブレイクは謎にも感じた人も多かったのではないか。
その大きな要因はノブのツッコミを全面に出すスタイルにしたのが一番大きいだろうが、
今のねちっこく岡山弁でボケ続ける感じは変わっていない。
そのワードも「へねぇ」「おぬし」「智弁和歌山」「スパム」……
クセが強くて、この部分だけ切り取っても何のことだか分からない。
しかしウケた。ねちっこさの妙で。
2000年代後半は「レッドカーペット」に代表されるように、1分ほどのショートネタしかやっていない時代だったので、
たしかにねちっこく、シュールな言葉遣いで笑いを取る千鳥には厳しい時代だったはず。
しかしそれでも地道に業界のレジェンドが評価した得意技を磨き続け、やり続けた結果、時代が変わり、地力のある実力派にチャンスが舞い込んできたのだ。
その頃には中堅で、若手時代に逃したチャンスをものにした結果、今の千鳥があるとみている。
この業界の期待を受け続ける、1分では分からない独特な世界観を持つ感じが、職種は違えど、め組と被る。
色つけたところ照らし合わせたら分かってもらえるはず。(流石に日本一つまらないバンドとは思われてないが)
芸人は昔、何でもTVで評価されてたが、バンドは今、何でもYouTubeで評価されるに置き換えてもいける。
でもやはり最後は本物が勝ち残るはずで、もう一つ上を目指しこまねいている若手バンドの中で、め組はそこから飛び出すバンド枠筆頭だと思っている。
本当にライブもいいんだから。め組を1ミリも知らない友達がライブ見てCD買ってたから!
まとめ
最近、め組は2人脱退し、3人になりました。
さよなら、また今度ねの時は、また違った意味でキワモノ感のある4人だったから、解散しても少し納得できたし、今でも仲良さよう?だったけど、
め組は本当に全員プロ志向が強そうで、そんな5人がまとまっていい感じに上に向かっている感覚がファン目線ではあって少し驚きました。
でもこのピンチ、これは完全に個人的感覚ですがピンチであればあるほど、さらに「菅原POP」は深みを増すんじゃないかと思っています。
そして今の10代の踊るのが好きなライブキッズが成長して、今少し流行りかけている「読むロック」に興味を持った時、その深みにちょうどハマるんじゃないかと思います。
サウンドが天才的にPOPなのと、結成直後からいろんなチャンスをもらってるバンドで見られているので「永遠の期待の若手枠」的な見られ方されすぎで、
め組の文学的側面って、ファン以外に思ったより広まってない気がする。
ただあくまで僕の表現だが、め組の世界観は今最も業界の評価が高い芸人:千鳥を持ってこないと表現できないくらい、面白い世界である。
普段1分くらいでバンドを判断してしまってる人も、たまには4分をめ組に捧げてみましょう。
聴いたときに感じたその「クセ」は、数年後、巷を虜にする「クセ」なんじゃ~
それでは、この辺で。