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新AL『明星』はBURNOUT SYNDROMES流“徹底のロックンロール舞台公演“

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BURNOUT SYNDROMES
面白いバンドである。
このアルバムも非常に「そうきたか!」ではなく、「そこまでするか!」というアルバムになっている。



歌詞はデビュー当初から、そして何曲かだけ知っている人でも面白いというか、定評があることは知られている。

そしてサウンドは力強いバンドサウンドは残しつつ、「この音の素材入れてみたらええやん」みたいなのをドンドン入れ、今できないと思ったら、めっちゃ勉強して完成した形で入れ込んでくる。

しかもそういう音も、最近ロックシーンで流行りの洋楽風とかヒップホップ調とかではなく、身の回りの生活音やむしろ日々の静寂みたいの「音なき音」にさえ表情を与えてくるのだ。
前回の『孔雀』レビューブログで、ありとあらゆる単語や名詞に、詞で個性を与えてくると書いたが、今作はそれがサウンドにも乗り移って進化している。

とにかく曲に妥協なく、その為に形などに縛りを設けることはない。
このアルバムもギターボーカル熊谷さんの「脳内世界の旅」、
そしてインタビューで答えていたように「応援歌」というコンセプトに、
自由な発想で届けてくる。




…………で、本当に自由すぎた。



曲ごとにキャラクターが出てくるアルバムというのは、もちろん作るの難しいけど、言ってもいろんなアーティストがしてること。
バーンアウトも結構昔からの得意技ではないかと思う。
ただやっぱりバンドの個性や背景が見えてしまうというか、バンドのイメージっぽいキャラクターや景色で連想をしてしまう。

恐らくそういうのを完全に切り離すのって無理だし、そういうのでもチラチラ見えるバンドの姿みたいなのが、逆により世界観を引き立てるし、ファンを引き寄せる要因になってると思う。


そして今作は少しコンセプトアルバムっぽい要素もあって、曲のキャラクターもより際立ってるんですけど、問題は今作のチラチラ見せる3人の姿ですよ。



お三方、コスプレまでしてませんか?

曲によって、
砂漠を往く商人の格好になってませんか?
eスポーツ大会会場の設営スタッフになってませんか?
大統領の演説会に来ている口髭に長くて黒いハット被った演説聞くヨーロッパ人になってませんか?
城下町で城を守る門番の武士になってませんか?
エロ淑女を派遣する如何わしい店のボーイになってませんか?
老人の特殊メイクしてませんか?
雀荘の隣の中華料理屋でチャーハン作ってませんか?


今回の『明星』という星は、一応住人は一人ぼっちという設定だから、他の人の姿は見えないというのが正しいとは思うけど、
三人が曲に合わせて、ここまで曲の舞台にそぐう風景人物になってたら、その曲の舞台の他のいろいろな人のにぎわいも脳に映像として浮かんじゃうよ。すいません。

別にチラチラ見えるバンドの姿って、普通の演奏する姿でいいんですよ。
エロ淑女や老人メイクって書いたりしたけど、それってあんまりクールじゃない姿もファンに見せてるわけだから、そういうのを嫌うバンドもいる。

でもそれくらい徹底的に曲によってステージの振り切った転換みたいなのが行えるのが、このバンドのとても面白いところで「そこまでするか!」というところ。
そして、それを間違うと曲の全体像がぼやけ、ネタ的要素が強くなったり、無難すぎても、少し機械的な面やアニメ的な面が出るが、
それを感じさせずしっかり「君と僕」の世界の舞台が整われてるのは、曲のバランスセンスと、しっかり血の通ったバンドワーク、何より3人の信頼関係、特に熊谷さんに対する2人の信頼感じゃないかと思った。

こっちのほうが、僕はライブハウスで意味もなく毎度煽るバンドより、よっぽどバンドっぽいんじゃないかと感じる。


もう1つ言うと、今まで以上に熊谷さんの声色が豊かな気がするのも理由の1つだと考える。
どちらかと言うと「物語を読む」言うなら講談師系の歌声だったけど、今回はよりキャラクターに近い声優系の歌声みたいなのも、少し掴んでいる気がして、それがよりアルバムの「振り切り力」に作用していた。
これは過去のアニメタイアップ・イベントの経験をしっかり無駄してない証明かもしれませんね。




まーとーめー


あともう一個外せない「そこまでするか!」ポイントがあって、それが歌詞カードなんだけど、
これは買った人は分かると思うんですけど、説明するのは野暮なので、まぁぜひ買って驚いてもらいたいです。

本当に何度も読みたいと思ったし、印刷費とか分からないですけど、お金かけたというよりはアイデアの勝利な気がします。
セルフライナーノーツが付いてるとかじゃないんですよ。


そしてこのアルバムは、ここまで場面の違うストーリーの舞台を見せつけるような徹底したプロ根性溢れる曲群を見せておいて、
最後は素の、いつもの格好のBURNOUT SYNDROMESが、曲の舞台降りて、僕らの近くに来て、地声で、


「いつもありがとう。
これからもよろしく。」


という意味合いを込めた洒落た短いメッセージを残して去っていきます。


…………この終わり方はすごい感動的というか、こっちこそ『満場総立』だわ!
この『明星』という舞台に!

というか10曲聴いてもらうことに、しっかり専念してるな、と感じた。



昨年のBURNOUT SYNDROMESは、夏フェスの参戦も増え、ファン層もより広がった一年じゃないかと見えた。
だからこそもしかすると、あの『LOSTTIME』あたりの、刺々しいまでの万物に儚さを与える歌詞が薄れゆく心配もあったが、ちゃんと歌詞も歴史の名言が出てきたり、いろんな武器が出てくるという百科事典のようなワードチョイスは健在だし、何よりサウンド面の進化とや経験値があるからこその割り切ったプロ根性で、音源ながら舞台を見てるようなきっちり期待に応えるアルバムになっている。


今年もしっかり追っていきたいし、
ついに初ライブに行くので!
むちゃくちゃ楽しみにしたい。





それでは、この辺で。

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